1 事例概要
父親が、離婚した母親に対して2人の子(平成16年生まれと平成19年生まれ)との面会交流を求めた事案です。父親と子は、父親が面会交流を求めて調停を申し立てた当時、既に約3年間交流がありませんでした。
2 裁判所の判断(第1審)
非監護親の子に対する面会交流は、基本的には子の健全育成に有益なものということができるから、これにより子の福祉を害するおそれがあるなど特段の事情がある場合を除き、原則として認められるべきであるとした上で、本件で子の福祉を害するような事情はなく、月1回、子と父親だけの6時間の面会交流を行うとすることが相当としました。
3 裁判所の判断(第2審)
父親と子との交流は長らく途絶えていたことから、子に父親の記憶がなく、あるいは断片的なものとなっており、父親も成長した子の性格等を把握できているとはいえないなどとした上で、最初から父親と子とだけで長時間の面会交流を設定することは、子にとって精神的負担が大きく、かえって面会交流に対する消極的な気持ちを強くさせかねないことや、子に対する対応に不慣れな父親にとっても課題が多いといえることから、最初は面会交流時間を比較的短時間に設定し、回数を重ねながら、段階的に面会交流時間を伸ばしていく方法(3回目まで2時間、4回目から7回目までは4時間、それ以降は6時間、2回目までは母親の立会いを許すもの)を執るのが相当であるとしました。
第2審も、第1審と同じく、面会交流を実施すべきという姿勢を維持しましたが、第2審では、面会交流の回数を重ねていくことにより自然に無理なく双方の心理的な距離を縮めていくのが相当として、直ちに長時間の面会交流をさせることは認めませんでした。このように、第2審の判断は、父親と子との交流が長らく途絶えていたことなどに照らし、極めて柔軟な判断をしたものと評価できます。
なお、本件で母親側は、試行的面会交流の後、子の面会交流に対する気持ちが消極的になったなどと主張していました。しかし、裁判所は、面会交流に対する消極的な気持ちは面会交流の回数を重ねて双方の心理的距離を縮めていくことによってこそ解消し得るのであり、父子の面会交流を妨げる事情であるとはいえないとしています。