大阪高裁平成26年12月5日判決をご紹介します。
このケースは,平成11年12月に夫婦が婚姻し,平成12年に長女を設けましたが,平成14年に夫が自宅を出ていき,夫から離婚調停及び離婚訴訟が繰り返された事例です。別居の原因としては,夫が妻に対し暴力をふるい,不貞を継続するために家を出たものと裁判所は認定しています。平成14年の別居開始から,高裁の口頭弁論終結時(裁判の審理終結時のこと)まで約12年間もの別居の期間がありました。
第1審(大阪家裁平成26年6月27日判決)では,①別居期間の長さや,同居再開の措置が具体的に講じられていないことから,婚姻関係に修復の見込みはなく,民法770条1項5号の離婚事由の存在を認めました。そして,②夫から妻へ婚姻費用が支払われ続けていることや,長女の学費負担を申し出ていること,多額の慰謝料支払いを申し出ていること,婚姻関係を形式的に維持しても長女の心情安定につながるものとは言い難いと判断されること等から,夫の離婚請求を認めました。
ところが,第2審(大阪高裁平成26年12月5日判決)では,①婚姻関係に修復の見込みはない,という判断は維持したものの,②婚姻関係を破たんさせたのはもっぱら夫の責任(有責)であることを重視し,その経緯に照らして,夫からの離婚請求は信義誠実の原則に反し許されないと判断しました。たとえば,婚姻費用の分担も妻側から求められた自発性に乏しいものであり,また,十分な婚姻費用の支払いとは言えなかったことや,長女に対して両親がともに親権者として監護にあたる必要があること等の要素が指摘されています。
婚姻関係を破たんさせ,離婚の原因を生じさせた配偶者を「有責配偶者(ゆうせきはいぐうしゃ)」と言います。
典型的なのは,本件のように,不貞行為を働いた配偶者です。
従来より,判例上,有責配偶者からの離婚請求は,離婚事由自体が認められる場合(婚姻関係が破たんしている場合)であっても,認容する範囲が限定されてきました。
最高裁昭和62年9月2日大法廷判決は,「離婚請求は,正義・公平の観念,社会的倫理観に反するものであってはならないのであって,……信義誠実の原則に照らしても容認されうるものであることを要するものといわなければならない」としています。
そして,信義誠実の原則に反するかどうかは
①別居期間の長短
②未成熟の子の存在
③離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて苛酷な状態に置かれるかどうか
などが考慮要素となります。