緊急事態宣言が発令される等,世間は新型コロナウィルスの影響が日に日に大きくなっています。まずは,皆様のご安全を心よりお祈り申し上げます。
さて,そんな中,SNSを中心に世間では「コロナ離婚」というワードが出始めています。
新型コロナウィルスの影響による外出自粛や,自宅待機などで,夫婦間の価値観のすれ違いが表面化するようになったり,あるいは経済的な不安が引き金になったりしているようです。
今まで誰も経験したことのない状況ですから,誰しも自分が把握している以上に強いストレスがかかっています。そのため,配偶者の一つ一つの言葉や行動にイライラすることも当然あるでしょう。このイライラが,普段の状況に戻っても「どうしても耐えられない」ものなのか,あるいは今この状況による一時的なものなのか…。いかんせん,自宅待機や外出自粛の結果,一人になって落ち着いて考える時間が急激に少なくなっていることが,判断を難しくさせているように思います。
離婚は,一度一つになったものを,切り離していく作業ですから,それ相応の負担は生じます。離婚するかどうかは,平時でも難しい判断です。普段,離婚のご相談を受けている弁護士だからこそ,このような状況では,なおさら冷静に考えて判断することを大切にしていただきたいと感じています。
他方,厳しいストレス下で,自宅にて長時間過ごすことが増えた結果,DV(ドメスティックバイオレンス。家庭内暴力)の増加も指摘されています。国連が各国政府に支援を呼びかける等,日本のみならず世界で見られ始めた傾向のようです。
現在は,感染防止のための不要不急の外出であったり,都会から田舎への移動の自粛が求められています。しかしながら,DVからの避難が「不要不急」でないはずがありません。新型コロナウィルスだけでなく,自らの身の安全を守るための行動を自粛する必要はないと思います。
DVからの避難先としては,①婦人相談所による一時保護等を経たうえで,新たな住居を設定したり,母子生活支援施設等を利用するパターンや,②実家や親族の家に行くパターンがあります。後者は身近な人が支えてくれる安心感がある反面,相手方配偶者も場所がわかっているので直接やってくるようなリスクもあります。実際の家族関係や,実家との距離,支えてくれる親族の状況なども踏まえながら判断していくことになります。
また,前者のような公的な保護を使うかどうかにかかわらず,一度,配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)や警察の生活安全課に相談することもお勧めします。事案によっては,DV防止法に基づく接近禁止命令という手段をとることもありますが,その前提として,DVセンターや警察に相談しておくことが必要です。
まずは避難し,身の安全を確保した後,冷静に離婚するかどうかを判断してください。いざ離婚の交渉をするとなった場合には,DV加害者と対峙することになりますから,弁護士を代理人として利用することをご検討いただければと思います。
ちなみに,緊急事態宣言を受けて,離婚調停を含め,裁判所でも期日の延期・中止などが見られるようになってきています。今から離婚協議を行う場合には,そういった意味で少しスケジュールの先行きが不透明なところがあるのでご留意ください。
他方,DV防止法による保護命令など,緊急性の高い案件は事件ごとの判断とされているようです。
弁護士 大畑亮祐