私は、以前、大阪家庭裁判所で非常勤裁判官として4年間、離婚調停の実務を担当しておりました。裁判官室で常勤のキャリア裁判官と机を並べて議論したり、調停委員のみなさんと事件について評議をしたり、実際に調停室にはいって当事者を説得したり・・・。弁護士として当事者の代理人として活動するのとは、まったく違う方向から離婚事件と向き合う貴重な経験をさせていただきました。
調停という場は、お話合いの場です。調停委員は双方の言い分を聞いて、調整をして、なんとか双方が折り合って、調停成立できないかを探り、公平や常識の観点から譲歩を迫っていくこともあります。調停委員や当事者の個性により、調停の雰囲気は事件ごとにずいぶん異なってきます。ただ、あくまでも調停はお話し合いの場ですから双方歩み寄りがみられなければ、「調停不成立」となってしまいます。
だいたい、調停不成立となるのは、一方が離婚を求めているのに、片方に全くその気がないというケースなのですが、同居しているケースもあれば、別居しているケースもあります。
家裁の申立てでは、女性が離婚を求めているケースで過半数を占めているのですが、女性側の申立ての場合には、たいてい婚姻費用の請求が追加されます。調停申し立て時には同居中でも、調停中に別居するという話になることもあります。離婚についての話し合いは2回ほどで終了し、あとは婚姻費用の話し合いになるのですが、これも双方の収入の資料を出し合って生活状況を勘案して、算定表をもとに話が進められるのでたいていはその線で合意ができます。自営業などで公的な収入証明書と実態が乖離していると主張されるケースでは難渋しますが、それでも双方が調停に出てきている限りはなんとか折り合いがつくことが多いです。
離婚を求めている女性にとっては離婚が不成立で終わっても、調停中に別居して婚姻費用の請求をすると、同じ屋根の下で不機嫌な顔を突き合わさなくてもすみ、婚姻費用についても一定の結論が出るので、調停を申し立てたことに一定の成果が得られます。
調停って相手が出てこなければどうなるんですか?という質問を受けることもありますが、家庭裁判所では、相手に連絡をして出頭するように要請をしてくれます。それでも相手が出てこないこともありますが、私の感覚では、それは、例外的なことであり、相手方がでてくることがほとんどです。婚姻費用の請求については相手が出てこない場合は一定の資料をもとに裁判官が「審判」で婚姻費用の支払いを命じてくれます。(弁護士澤田有紀)