家庭裁判所では,養育費や婚姻費用を算定するにあたって,各種統計資料により収入の中から生活費に要する費用を算出して,審判などで計算に利用しています。
養育費の算定にあたっては,自分の生活を保持するのと同程度の生活を子供たちにさせる義務(生活保持義務)として,妥当な金額を決めることになります。詳しい計算式は割愛しますが,家庭裁判所のホームページには,権利者と義務者の収入に応じていくらくらいになるのかが一目でわかるように「算定表」として掲載されています。
この表の見方なのですが,まず,養育費の場合,表1から表9まで,扶養すべき子の数と年齢区分に応じて9種類用意されていますので,該当する表を探します。
たとえば,離婚後,母親が子供2人(5歳と9歳)の親権を得て父親に養育費を請求する場合には,表3 子2人表(第1子及び第2子0~14歳)の表を利用します。父親が会社員(給与取得者の場合には,縦軸の外側の目盛で年収(税込の総収入額)で該当の箇所をチェックします,横軸には請求者である母親の年収のところをチェックして,横軸と縦軸が交わるゾーンが子供二人分の合計の養育費となります。たとえば,父親が会社員で年収が480万円,母親が年収100万円とすると「6から8万円」のゾーンにはいりますので,二人合計してこの金額の幅の中でいくらかを決めることになります。
離婚するまでの間に夫と別居した場合には,婚姻費用を請求することになるのですが,婚姻費用の場合は,子供たちの生活費に加えて,妻の生活費も夫に請求できるので,一般的には養育費よりも金額が高くなります。婚姻費用の表は算定表では養育費の表の後ろのページに記載されていますが,さきほどの例で婚姻費用がいくらになるのかを見ますと,表13が該当の表になります。この場合,同じ条件でみてみると,「8から10万円」のゾーンが該当します。養育費だと「6から8万円」ですが,婚姻費用だと「8から10万円」となり,2万円アップとなりますがこれが妻の生活費相当額ということになります。
夫がなかなか離婚に応じない場合には,とりあえず,別居をすると婚姻費用を請求することができますし,上記のとおり婚姻費用は養育費よりも金額が大きくなりますので,夫にしてみれば,いずれ離婚が避けられないのであれば早めに離婚に応じて養育費だけを支払った方が経済的には得ということになります。離婚の調停では,このあたりの理屈を説明して,離婚になかなか応じない夫を説得する材料にしたりします。