Aさんは、妻と結婚し、まもなく子どもが生まれました。
ところが、2人の間に子どもが生まれたころから、妻とけんかになることが多くなり、話合いの結果、妻は子育てのため退職し、Aさんが残業をする等して家計を支えることになりました。
ところが、いざ、妻が退職してみると、妻は、Aさんに対して、もっと子育てに協力してほしいという思いを持ち始め、夫に対する不満がつのっていき、一方でAさんは、仕事を終えて帰宅すると、妻が子どもにきつくあたっている姿を目にすることが多く、このことに不満を持っていました。
ある日、Aさんが妻に子どもにきつくあたらないよう注意したところ、不満を抱えていた妻もAさんに反論し、けんかになり、これをきっかけに、夫婦の間でのけんかが増えていきました。
そして、大きな言い争いとなった後、妻は、Aさんに対し、けんかに対する謝罪と離婚を求め、その後、夫が自宅をでて別居するに至りました。
Aさんは、妻の感情の起伏が激しく、一度口論になると感情が高ぶり、冷静に話せない事や、話してもいつも平行線で結論が出ないことなどから、夫婦で話し合って離婚に至ることは難しいと考え、弁護士に相談しました。
相談を受けた弁護士は、妻の性格上、任意での協議は難しく、調停による話し合いが相当と考え、調停を申立てました。
調停では、夫婦のすれ違いの原因が子育てにあったことから、夫婦としてやりなおす可能性も模索されましたが、双方が今までのけんかを冷静に振り返った結果、今後の同居は難しいと判断され、最終的には離婚の方向へ舵を切ることになりました。
Aさんは、自身の仕事の関係もあり、妻が最終的に親権者になることはやむを得ないと考えていましたが、これまでの育児を見ていると、また、子どもに対してきつく当たるのではないかと強い不安を感じていました。そこで、弁護士は、Aさんの不安を解消すべく、調停の早い時期から家庭裁判所の調査官の調査を求めました。
家庭裁判所の調査官は、妻と夫の事情を調査し、離婚後の双方の子どもとのかかわり方等についての意見を出しました。
調停において、妻と夫は、調査官の意見を参考にしながら協議を続けたところ、妻は、自らの育児を振り返り、今後の子どもとの関わりについて配慮することを約束したことから、Aさんは親権者を妻とすることに合意できることになりました。
その後、途絶えていた父と子の面会交流も行われるようになり、財産分与についてもスムーズに合意することができ、調停での離婚が成立しました。
本件において、Aさんは、親権者が妻となることはやむをえないものの、その育児方法に危惧の念があったことから、このことが解決できないと離婚できないという状況でした。
そのため、弁護士は、裁判所に対して、妻の養育状況や環境を確認するため早い時期から家庭裁判所の調査官の関与を求め、また、夫が、妻の子育ての中で感じている心配を具体的に調査官に伝えてその点を重点的に調査してもらったり、調査官から、妻に対して、夫が抱いている危惧を伝えてもらう事等を行いました。
その結果、調査官による養育状況の調査とこれについての調査官の意見を前提に、子どもにとって望ましい監護の観点から、夫と妻が協議を重ね、その結果双方が歩み寄って合意に達することができました。
また、一番の懸案事項であった親権の問題が解決できたことから、財産分与や途絶えていたAさんと子どもとの面会交流も再開でき、スムーズに調停での離婚が成立しました。
親権や面会交流の問題は、激しい争いになりがちですが、本件は、早期に調査官が関与したうえで、弁護士が調査官に対して適切な情報を伝えていくことで、穏便に、早期に解決することができました。
家庭裁判所の調査官は、子どもの発達に望ましい環境がどのようなものかを、心理的・社会的・福祉的な側面から検討します。
親権や面会交流の紛争を解決していくには、法的な視点のみならず、このような視点も併せて考慮することが必要です。
離婚の際、子どもにどのように関与していくのかも含め、専門知識を有した信頼できる弁護士に相談されることをお勧めします。