ある日突然、妻が「夫から暴力を受けた」と3歳になる子供を連れて家を出て行ってしまいました。夫であるSさんはまったく身に覚えがなく、どうにか妻と連絡が取れないものかと手を尽くしましたが、妻がDVと言い張り、頑なに連絡を拒みつづけていました。。断絶状態になっているなか、妻の代理人である弁護士から婚姻費用と離婚の調停を申し立てるという連絡が届きました。Sさんとしては離婚も嫌ですがこの状況では仕方がありません。しかし、妻が連れて行った子供のことはどうしても諦めることができませんでした。
離婚調停が始まれば、断絶状態である今の状況から少しは前進すると期待していたSさんでしたが、新型コロナウイルス感染症の流行により裁判所が停止してしまい、期日が先延ばしになってしまいました。妻への連絡手段がないため連れて行かれた子供がどうしているのかも分からず、心配でいてもたってもいられなくなったSさんは弁護士に相談することにしました。「とにかく一度子供に会いたい」というSさんの気持ちを聞いた弁護士は、まずはお子さんとの面会交流の実現を目指しながら、今後離婚や子供とのかかわりをどのようにしていくか考えていきましょうとアドバイスをしました。
妻の家庭環境に不安を抱えていたSさんは、当初、自分が子供を育てる方がいいと考えていました。しかし、親権を争うと調停が長引き、子供と会えなくなる期間も延びてしまう可能性が高いことが分かりました。また、Sさんが親権を主張することで妻の態度が硬化し、今以上に「子供には会わせない」と言い出しかねない可能性もありました。弁護士と話し合い、自分の考えを整理していくなかで、Sさんは少しでも多く会う機会を確保して子供の成長を見守り続けられるような解決を目指したいという気持ちに変わっていきました。
弁護士が妻と辛抱強く交渉を続けた結果、調停中に面会交流が実現しました。コロナ禍であるため慎重に安全な場所を選定しつつ、毎月定期的に子供と会えることになりました。子供が無事に生活していることがわかり、Sさんはほっとしました。また、Sさんと子どもの面会交流を行ったことにより、妻も、面会交流を継続することが子どもの成長に資すると理解したこともあり、、今後も面会交流を継続することを条件に、離婚が成立しました。
妻が出ていった原因となったDVとの主張は、Sさんには全く身に覚えがないものばかりでした。しかし、妻が、調停において、涙を流しながらDVだと強く主張したことから、調停委員へのイメージが悪くなり、Sさんの立場が不利な状況に追い込まれる可能性がありました。しかし、弁護士に依頼し、調停手続きに弁護士が同行したことで、妻側の主張に対しても、冷静に、対等に反論することができ、調停委員も、Sさんの立場を理解し、尊重してくれました。そして、妻に対しても、子どもとの面会の重要性を結果的に双方が納得するかたちで離婚が成立させることができました。
親と子供が会う面会交流は、離婚前でも当然認められるものです。DVや連れ去りの可能性が高い場合はその限りではありませんが、その場合には証拠が求められます。今回のケースでは、Sさんはいち早い面会交流を望んでいましたが、DVと主張する妻の頑なな対応とコロナ禍のため交渉の機会が得られませんでした。代理人となった弁護士が妻と粘り強く交渉を続けた結果、早い段階でお子さんと再会することができました。
面会交流は親のためというよりは、、子供の成長のためという観点で考えていただきたいものです。子供の成長にはお父さん、お母さん双方が関わることが大切です。監護している親が、「あんな人に会わせたくない」「絶対ろくなことにならない」とおっしゃられるケースも多く、実際にそういう場合もあります。しかし、多くの場合、離婚原因は夫婦間の問題で子供は巻き込まれたに過ぎません。当事者にとっては顔も合わせたくない憎い相手でも、子供にとってはかけがえのない親です。親権や面会交流については、その子供の気持ちを第一に考えることが大切だと考えています。離婚を控えてお子さんに会わせてもらえない、離婚後面会交流を断られるとお悩みの方は是非一度弁護士にご相談ください。