Tさんはつい出来心で職場の同僚と不倫関係になり、妻にバレてしまいました。猛反省し、もちろんすぐに不倫相手との関係は解消し、ひたすら妻に謝るTさんでしたが、一度失った信頼は二度と戻らないと言って妻は子供を連れて実家に帰ってしまいました。
その後、妻から離婚したいという連絡がきました。Tさんとしては二度と不倫はしないし反省もしている、なによりも愛娘と一緒に暮らせなくなるのが辛く、できればやり直しさせてほしいと考えていました。しかしある日、妻の代理人である弁護士から離婚協議申し入れ書が届きました。
妻が弁護士に依頼したことを知って、妻が本気であることをTさんは悟りました。とはいえTさんもあきらめるわけにはいきません。なんとかうまく収める方法はないものかとTさんも弁護士に相談することにしました。
Tさんは不倫をし、それを認め、証拠もあります。原因はTさんにあるので、本人がどれだけ離婚をしたくないと言っても難しい。そして、いかに子供を愛しているといっても主に育児をしているのは妻である以上親権の獲得も難しく、慰謝料についても一定額は覚悟する必要があるというのが弁護士の見立てでした。厳しい状況ですが、まずは自分の状況を冷静に受け止め、そこからどうしたいか考えましょうとアドバイスしました。
弁護士の話を聞いて、Tさんはやり直したいという自分の考えが甘かったことに気づき、離婚はやむなしと納得することができました。そして、自分が育児をしていたわけではないので親権獲得もあきらめるが、せめてこれから先も子供には最大限関わっていきたいというのがTさんの一番の望みでした。
Tさんの考えがまとまったことで、双方の代理人が協議を開始。弁護士は慰謝料や収入に応じた養育費の支払いにも応じると約束してTさんの誠意を見せ、子供との交流に関しては最大限譲歩してもらえるように粘り強く交渉しました。その結果、月2回の面会交流、祖父母を含めた宿泊交流の機会などを認めてもらい、離婚協議書を作成し、離婚が成立しました。
「自分が悪いとは思っているけれど反省しているからやり直したい」というTさんの最初の要望は、残念ながら叶えられるものではありませんでした。できること、できないことを当事者自身が冷静に判断し、整理することは難しいことです。Tさんは弁護士から法律の専門家としての見解を聞くことで、自身の要望が無理なものであることに納得できました。そして弁護士の提案によって、離婚に関してはあきらめるしかないけれど、その代わり子供に関する部分はできるだけ譲歩してもらおうと前向きに考えることができました。
子供の面会交流に関しては、離婚協議時に取り決めはしたものの思うように実現されないケースも、実際問題としては少なくありません。やっぱり子供と会わせたくない、何度か面会交流をしたものの大変だった、成長するにつれて子供が多忙になりスケジュールが合わないなど、反故にされる理由はさまざまです。Tさんは今後も積極的に子供とか変わっていきたいと強く希望されていたので、その旨をしっかり協議書に記載して、面会交流の実効性をできるだけ担保できるようにしました。
子供との面会交流を取り決めどおりに実行するのは意外と難しいものです。離婚した者同士が連絡を取り合って日程を決めて、お互いに待ち合わせ場所まで子供の送り迎えをするのは親権者からすると煩わしいことです。そのため、実際には年々少しずつ回数が減っていったという事案もあります。。思うように面会交流が実現しない場合には、面会交流調停の申立てを行ったり、一度調停を経た事案では履行勧告や間接強制の申立てを行う場合もあります。いずれにせよ、実行可能な面会交流の回数や方法を離婚協議時からしっかりと話し合っておくことが大切です。言った言わないで後々トラブルにならないよう、離婚を決めた際には弁護士にご相談ください。