「サッサと離婚届を出してすっきりしたい」とおっしゃるあなた、ちょっと待ってください。貯めた預貯金や買い揃えた家財道具、家や車などの財産は置いて行くのですか?結婚期間中に夫婦で協力して築いた財産を、離婚時に分けることを、「財産分与」と言います。離婚後の生活のことも考えて、あなたが当然受け取る権利のある財産は、ちゃんともらっておきましよう。
財産分与には4つの要素があります |
婚姻中に夫婦で築いた財産を、離婚に当たって清算することで、これが財産分与の中心になります。名義や収入の差に関係なくほぼ平等に分ける方法が基本になります。
妻の収入が夫より少なくても、専業主婦でも、夫婦の財産は二人で築いたものですから、貢献度は実質同じと見なす「1/2ルール」が原則です。将来の退職金も財産分与の対象になります。財産の公平な分配の趣旨ですから、婚姻関係の破たんの責任の有無とは無関係であり、離婚の責任のある側からの請求も認められます。
(夫婦の一方がスポーツ選手や企業経営者など、非常な高額収入者である場合の貢献度は例外とされることもあります。)
財産分与には、財産の清算だけでなく、経済的な格差を踏まえて、養育費とは別に、暮らしを補う意味を含むことがあります。子どもが小さくて働きに出るのがむずかしく、➀や養育費だけでは生活が苦しいといった場合、二人で話し合って、離婚後何年かは生活費を受け取るというケースもあります。
本来は区別して考える慰謝料と財産分与を、まとめて一つにして、請求したり支払ったりすることもあります。例えば、離婚原因が夫の浮気であるのは明白でも、慰謝料という名目に夫が反発して支払いを拒否するような場合、財産分与の名目で慰謝料相当額を盛り込むことで、柔軟な解決を図ることができます。
結婚中や別居中の生活費(=婚姻費用)が支払われなかった場合、離婚後の財産分与の名目で請求できることがあります。
計算の手順と方法は? |
資産価値のある財産を、名義にかかわらず、もれなくリストアップします。なお,ここに言う財産は,基本的には「別居時点」の財産です。
<プラスの財産例>
不動産、預貯金、現金、有価証券、ゴルフ会員権、自動車、生命保険、学資保険、個人年金、退職金、貴金属や美術品、家財道具 など
<マイナスの財産例>
住宅ローン、車のローン、その他夫婦の結婚生活のための借金など
※ただし、債権者の同意が無い場合は、債務そのものを分与(名義変更)することはできません。
分与の対象になるのは、結婚した夫婦が共同生活を営む中で、協力して築き上げた「共有財産」です。預貯金は名義に関係なく「共有財産」とみなして、財産分与の対象になります。
結婚前から各自で所有していたもの、結婚後に親兄弟から贈与されたものや遺産、別居後に得た財産は「特有財産」といい、財産分与の対象からは外れます。
<プラス財産の総額>-<マイナス財産の総額>=財産分与の対象額です。
不動産や自動車は、a)どちらかが持って相手に支払いをする、b)売却して利益を分配する、などの方法が考えられます。
なお、財産や債務は,それぞれの名義のものがあるでしょうから,実際に分与される額は,上記の計算によって算出された額と,現在の名義の額の差になります。
具体的な分与の方法は? |
財産分与は、お二人の話し合いで自由に決めることができます。取り決めをしたら、合議内容を盛り込んだ「離婚協議書」を作成しておきましょう。将来にわたって分割払いされるような場合は特に、「公正証書」にしておくと、万が一、支払いが滞った場合、すぐに強制執行(給料や財産の差押え)ができます。
すんなり決まれば問題ないのですが、話し合いがまとまらない場合は、離婚前なら家庭裁判所の離婚調停の中で分与の問題も話し合うことになります。離婚後なら財産分与の調停を申立ます。
財産分与の方法を巡って意見が対立したり、対象財産の計算法がわからないときや、裁判所に申立ることになった場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。
財産分与の請求には時効があります |
財産分与をせずに離婚しても、後で請求はできますが、処分されていたり、隠されたりすることだってありえます。離婚して2年たてば請求権は消滅しますから、手遅れということにもなりかねません。離婚を決めたら、まず財産チェックをして、きちんと取り決めをしておきましょう。
夫婦の財産分与は、原則、収入の差に関係なく「1/2ルール」で半分ずつ。
貯金や不動産も名義に関係なく「1/2ルール」で。
相続で得た財産は、結婚前、結婚中、別居中にかかわらず、分与の対象になりません。
財産分与の取り決めは、必ず「公正証書」にしておきましょう。
離婚後2年で、財産分与の請求は時効になります。離婚前に必ず話し合いを。