Kさんの夫はダイビングが好きで、結婚前からよく一緒に海のきれいな場所に旅行に出かけていました。夫はもともとうつ傾向ではありましたが、今の仕事に嫌気が差したのか、ある日突然「一人で暮らしたい」と言い、家を出ていってしまいました。残されたKさんは連絡を試みましたがメールや電話にも一切返答はなく、帰ってくる様子もありません。ダイビングが趣味であったことから、日常的にダイビングができる所で生活しているかもしれないと思いましたが、探し当てることなど現実にはできず、どこで生活しているのか全く見当もつきませんでした。幸いKさんは資格を持っており、夫がいなくなっても自分の仕事だけで十分暮らすことができました。結婚生活の中で夫の態度がモラハラだと感じることや、子育てに全く協力してもらえなかったことなど不満も多々あったことから、帰ってくるのかどうかも分からないあいまいな生活を続けるのは苦痛であると感じ、出ていった夫のことはすっぱりとあきらめてKさんは子供と二人で生きていこうと決めました。
こちらからのメールや電話に一切応じてくれない夫に業を煮やし、Kさんは弁護士に相談することにしました。弁護士は「お子さんも小さいので、養育費に関する取り決めを公正証書にしっかり残してから離婚した方がいい」とアドバイスしました。
これまで安否を気遣ったり、帰ってきてほしいというような内容のメールは送っていましたが、弁護士に相談した時点では「離婚したい」という意思を伝える連絡はしていませんでした。夫の性格上、離婚の申し出なら返答があるかもしれないとKさんの予想から、まずは弁護士を挟まず、Kさん自身のアドレスから離婚したいという主旨のメールを送ってみることになりました。
Kさんの予想通り、しばらくすると夫から離婚に承諾するという返答がありました。
夫は子供の養育費を支払うことも、それを公正証書として残すことにも了承しました。しかし、公正証書はいわば契約書であり、作成するためには公証役場でその内容に間違いがないか、公証人の前で夫婦ふたりの合意が求められます。そのため、公証役場には二人で出向く必要があります。夫は遠方のため、Kさんの住む大阪では公正証書をつくることができません。結果的に、Kさんの代理人として弁護士が夫の居住地の公証役場と連絡を取り、協議内容や必要書類等、事前の準備を行い、夫と調整した日程に公証役場へ出向きました。無事に養育費についても公正証書に記載することができ、相談から3か月後に離婚に至りました。
弁護士が入ることによって、ただ離婚するだけでなく、養育費に関する取り決めを公正証書に残すことができました。単に養育費といっても子供が大学に行くのか、進学先は国立なのか私学なのかで変わるのか、いつまで払ってくれるのかなど、どこまで細かく決めて公正証書の中に盛り込むことができるのかはむずかしいところです。また、子供との面会交流に関しても、学校行事や誕生日、イベントはどう過ごすのか、会う頻度はどうするかなど具体的に決めておくと後々のトラブルを防ぐことができます。
Kさんは離婚分野を多く手掛ける弁護士に相談することで、子供に関する取り決めについて余すことなく夫と話し合うことができました。
公正証書をつくるといっても、その内容はご夫婦の希望する内容や、家族構成、財産の内容等によって様々です。
また、ご夫婦が希望する内容を適切に公正証書に反映させるためには、公正証書の文言に工夫や調査が必要になることもあります。公証役場に行けば、すぐに自身の意思が反映された公正証書が作成できるというわけではありませんので、事前にしっかりと準備をすることが大切です。
公正証書は一度作成してしまうと、その内容には責任が伴います。
ネットサーフィンをすると、離婚に関する公正証書のひな形などが見つかりますが、それがすべて正しいというわけではありませんので、、弁護士などの専門家に相談しながら作成することをお勧め致します。