福岡から大阪へ単身赴任中に、浮気をしてしまったTさん。それを知った妻から離婚を切り出されました。
自分が悪いので離婚は致し方ないと思ったTさんですが、福岡と大阪ではなかなか満足に意思疎通が図れません。今ある財産の分割や慰謝料に加えて、年頃の子どもたちを今後どういうふうに育てていくかといったことも話し合わなくてはならないのに、電話やメールだけではニュアンスが伝わらず、離婚協議は難航しました。
また、そのなかで妻から離婚の原因となった自分の浮気を責められることもあり、Tさんは話し合いをすることに疲れてきました。
遅くまで仕事をした後に電話で妻と離婚協議をする日々が続き、Tさんは次第に自分たちで話し合うことに限界を感じるようになりました。離婚自体は仕方がないことだと受け入れており、妻に対して申し訳ないと反省する気持ちもあります。
しかし、償うと言っても限度があり、自分の今後の生活設計も考えなくてはなりません。妻の要求する離婚条件を無理のない範囲で応えるためにも、自分で考えるだけではなく誰かに頼った方がいいと気づき、Tさんは弁護士に相談することにしました。
Tさんから依頼を受けた弁護士は代理人として妻と交渉することにしました。
当初はTさんに対して妻のわだかまりは強く、要求された慰謝料もTさんの収入を考えると到底払いきれるものではありませんでした。そこで弁護士は妻と話し合い、離婚するにあたっての懸念事項を聞くことにしました。妻の希望は、離婚しても今の家に住み続けることと、子どもたちの教育費用を心配しており、そのためにまとまった金額を一括で希望するとのことでした。それに対して、一括での支払いはできないが、、住居や教育にかかる今後の実費をTさんが支払っていくことを前提とする提案をし、具体的な経済的利益の試算を示しました。
妻にとっては一括で現金を受け取るよりも長期スパンで考えると経済的にメリットがあり、Tさんにとっても一括で支払うよりも負担が少なく、無理のない内容になっており双方それで納得。一年ほどかかりましたが、無事協議で離婚が成立しました。
Tさんが相談に来られたときは、離れた距離で離婚協議を進めるのは当事者同士ではむずかしく、膠着状態にありました。そこに弁護士が入ることで事態を前に進めることができました。交渉を一任できたことで負担がなくなり、憂いなく仕事に打ち込むことができきて気持ちの面でも軽くなったとTさんは言います。また、最初は感情的だった妻も、当事者同士では浮かばなかった解決プランを弁護士が提案したことで最終的には落ち着いた様子で納得してくれました。
今回のケースで一番の特徴は、今後の夫が負担する生活関係費用を算出し、息子の教育費についても私立大学に進んだ場合の学費や学習塾の費用なども事細かに計算し、具体的にどの期間まで負担するかを決めて、協議書に記載した点です。
通常は子供に関わる費用は養育費として、「月いくら」とだけ記載し、具体的な内容にまで言及することは多くはありません。しかし、今回のケースでは妻は教育熱心で、離婚する際の懸念事項の一番は子どもたちに関することでした。そのため、細かな部分まできっちりと決めることで妻の安心を獲得し、大きく揉めることなく離婚に至ることができました。
自分に不利な状況での離婚は、パートナーから出される離婚条件が厳しいことや細々とした内容を要望してくるケースが多々あります。これに逐一対応していると、当事者同士ではお互いに疲弊してしまって離婚協議が進まないことが予想されます。そういうときこそ、弁護士の出番です。第三者が条件や懸念事項を一つひとつ交通整理しながら進めるとスムーズに協議が流れることもあります。また、客観的かつ法的に状況を整理することで、見えていなかった解決方法が見つかることもありますので、そういった状況の際には是非弁護士にご相談ください。