Hさんは10年前にうつ病を患っていた時期があり、その頃に幾度か浮気をしてしまいました。夫は許してくれましたが、そのときの罪悪感がHさんの心の奥にずっと残っています。ある日、ちょっとしたきっかけで夫婦間のトラブルになり、どちらともなく「離婚しよう」という話になりました。高校生になる子供が二人おり、一人ずつ引き取ることで話はまとまり、夫からは養育費として毎月5万円支払うと提示されました。夫は公務員でそれなりに高額の給与がありますが、Hさんは過去の負い目もあることから強くは言えませんでした。
離婚の話が出てからしばらくして、Hさんがインターネットで調べ物をしているときに、ひょんなことから「養育費は算定できる」ということを知りました。「子供のためにも少しでも多く養育費がもらえるなら」とHさんは弁護士に詳しく聞いてみることにしました。弁護士の話を聞いてみると、夫から提示された養育費の額はとても少ないということが分かり、財産分与もできることを知りました。夫は高学歴で弁も立つことから、Hさんは自分で交渉しても言いくるめられてしまうと弁護士に依頼することにしました。
弁護士と話し合った結果、こちらから離婚調停と婚姻費用の調停を申し立てることになりました。財産分与については、夫から開示された財産の評価が曖昧だったため、弁護士が評価し直したり、夫からの特有財産という主張に対して弁護士が反論するなどして、最終的には500万円を分割で受け取ることで合意。養育費に関しても、最初に提示された5万円を大きく上回る10万円を毎月受け取ることができるようになりました。夫婦で協議をしていたら受け取ることができなかった金額を手にできたHさんは、安心して今後の生活が送れるとほっとした様子でした。
弁護士に相談することがなければ、過去に夫に迷惑を掛けた負い目から強く出ることもできず、夫に言われるままの金額で離婚が成立していたと思われます。弁護士が介入したことで当初5万円と言われていた養育費も毎月10万円に増え、財産分与も公平にしっかり受け取ることができました。また、高学歴で几帳面、しっかりした夫に対してずっと引け目を感じていたHさんでしたが、対等に権利を請求できる立場にあると分かったことで自信を取り戻すきっかけになったと言います。
離婚前に自分に何が主張できて、どういう権利があるのかはきちんと調べておかないと後から後悔することになります。もう一緒にいたくないからと急いで離婚してしまった後、本来受け取ることができた財産や権利に気づいても後の祭りです。また、弁の立つ配偶者を相手にすると気づかないうちに言いくるめられてしまうこともあります。そうならないためにも、離婚を決意したら一度弁護士に相談することをおすすめします。財産分与や養育費、婚姻費用など、ご自身が主張できる権利や財産がわかります。