仕事柄、Yさんは転勤が多く、妻と2人の娘を残して単身赴任で全国を転々としていました。妻は子供が生まれてからは不在がちであった夫への関心が薄れ、育児に没頭。娘2人も妻にはよく懐いていますが、久しぶりに帰宅するYさんには顔さえ見せないこともありました。Yさんは自分の家でありながら居場所がなく、不満を抱きながらも、半ばあきらめて生活をしていました。そして年月が過ぎ、家から離れた同じ地域で長女が就職、次女が大学に進学することになり、妻も含めて3人ともその地域で暮らすことになりました。既に家族のかたちはなくなっていましたが、形式的にあった家もなくなり何もなくなったとYさんは感じました。そんな折、自分に対して好意を抱いてくれる女性が現れたこともあり、Yさんはこれを機に家族関係を解消しようと決意しました。
好意を寄せてくれる相手に応える前にけじめをつけたいとYさんは妻に離婚を切り出しました。これまで妻は自分には無関心だったので簡単に応じてくれると思っていましたが、「なんで今さらそんなことを言い出すの」と怒り出し、まったく話を聞いてくれませんでした。妻の剣幕に押されたYさんは、自分では妻を説得できないと思い弁護士に相談することにしました。
依頼を受けた弁護士はYさんが離婚したいと考えるに至った理由や決意は堅いこと、妻の考えを具体的に聞かせてほしい旨の手紙を妻に送りました。
弁護士からの手紙を受け取った妻は、弁護士に依頼するほど夫の離婚への決意は堅いとと認識を改めたようです。
そして、当事者同士では感情的になって話が進みませんでしたが、弁護士相手だと妻も話しやすいようで離婚に反対する理由として、次女の学費や今後の生活費への不安が大きいことも打ち明けてくれました。Yさんは次女の学費は卒業まで支払うことを約束し、財産分与などの交渉を進めて協議でまとまり、離婚が成立しました。
離婚問題は当事者同士で話し合うと感情面が先に立ち、話が前に進まないことが多々あります。今回のケースでも妻が感情的になってしまい、Yさんの話をまったく聞こうとせず、膠着状態に陥っていました。心情的に当事者には直接言いにくいことも代理人である弁護士に対しては話しやすいような場合もあります。弁護士が話を聞くことで、離婚するにあたってどういう部分に引っかかりを感じているのか聞き出すことができたので交渉の糸口を掴むことができました。
Yさんは家族に対しての不満をずっと我慢してきたことからもわかるように、不満があっても我慢をしてしまう、自分の意見を家族に強く言えない方でした。元々の性格もあるのでしょうが、家族のように長年かけて構築された関係性はなかなか変わらないものです。そういう方が離婚したいと思ったときに弁護士を頼るのも一つの手段です。自分の口からは言えないことも弁護士を通すことで対等に話し合うことができます。自分では上手く伝えることができないからと抱え込んでしまわずに、ぜひ弁護士にご相談ください。