Hさんは結婚当初から夫の性格が変わっていると薄々思っていましたが、子どもが生まれたあたりから看過できなくなってきました。突然暴言を吐き始め、ときには数時間続くこともある夫に困ったHさんは地元の法律相談に行きました。そこでは「もしかすると夫はうつ病かアスペルガー症候群などの発達障害かもしれない」と言われました。それとなく診察を進めてみたものの、本人にはまったく自覚がないのでケンカになってしまいました。
そんなある日、子どもと出かけた夫が、子どもにケガをさせて帰ってきました。幸い大したケガではありませんでしたが、それをきっかけに大ゲンカに発展。夫から離婚したいと言い出しましたが、次の日には親権をくれたら離婚してもいい、その翌日にはやっぱり離婚したくないなど態度がころころ変わります。こんな夫と付き合っていくことにHさんは疲れてしまいました。
離婚したいと言い出したあたりから、夫は生活費もくれなくなりました。疲れ切ったHさんは精神的ストレスで、自身がカウンセリングを受ける状況になってしまいました。離婚自体はHさんも望むところですが、離婚しようにも「親権を渡してくれたら離婚してもいい」「親権はいらないし養育費も払わない」「やっぱり離婚したくない」と日によって言うことが変わる夫と話し合って協議がまとまるわけもなく、困ったHさんは弁護士に相談することにしました。弁護士に依頼することで、自分の代理人となって夫と交渉してくれると知り、それだけでもHさんは日頃のストレスから解放された気持ちになりました。
弁護士は態度が変わる相手と協議は難しいと判断し、調停を申し立てることにしました。調停では当事者が顔を合わすことなく、調停委員を介してお互いの主張を調整することができるので、Hさんもリラックスして臨むことができました。当初、夫は調停でも暴言の一部は認めたものの自分に非はない、お金は一切支払わないと主張していましたが、弁護士がHさんの状況や夫について詳しく調停委員に説明したことで、調停委員が夫を上手く説得してくれました。最終的にはHさんが娘の親権を獲得し、収入に応じた養育費を夫が支払うことを認め、離婚が成立しました。
毎回言うことが変わり、突然大声で暴言を吐く夫にHさんは疲れ切っていました。カウンセリングを受けなくてはならないほど精神的ストレスを感じていたため、夫への対応を弁護士に任せられるということが、Hさんにとっては一番のメリットでした。依頼してからは娘と一緒に実家に戻り、夫と顔を合わせることなく離婚成立まで過ごせたことで、解決する頃には元気を取り戻すことができました。
養育費は娘のためだからとどれだけ説得しても夫は一切聞いてくれなかったので、本当に支払ってくれるのかHさんは不安でした。しかし調停では、弁護士が客観的かつ丁寧に状況を説明したことで調停委員がHさんの気持ちを汲み、夫の説得に当たってくれたため、夫も養育費を支払うことに納得してくれました。自分ひとりでは夫を説得することは到底できなかったので、弁護士に依頼してよかったとHさんは結果に満足されていました。
アスペルガー症候群や自閉症スペクトラムなどの発達障害は今でこそ広く知られ、子どもの頃に診断を受けて発覚する機会も増えましたが、大人になってから自覚するのは未だ難しいものです。実際、そうとは気づかないままに発達障害の伴侶を理解しようとしてコミュニケーションが上手くいかず、振り回されてしまい、自身も疲弊してしまうパートナーも少なくありません。
発達障害は本人が認識している場合はお互いに気を配ることで上手く折り合いをつけることができます。できることなら早い段階で医師の診断を仰ぐなどし、お互いに理解を深めることが大切ですが、今回のケースのように自分自身もカウンセリングが必要になったりうつ病などの症状が現れたりするようなら、離婚を選択するのも選択肢のひとつです。離婚は思っているよりもパワーが必要です。ひとりで抱え込まず、ぜひ専門の弁護士にご相談ください。