Aさんは夫と順風満帆な夫婦生活を送っていると思っていました。
ところが突然、夫から「実はずっと我慢していた。離婚してほしい」と告げられ、Aさんはまさに寝耳に水。確かに金銭的には我慢も必要な場面はありましたが、それはお互いさまです。何故急にそんなことを言い出したのか、Aさんには検討もつきません。どうせしばらくしたらほとぼりが冷めるだろうと、Aさんは夫の言い分にまったく耳を貸しませんでした。
しかし、夫は諦めるどころか弁護士に相談すると言い始め、絶対に離婚したくないと思っているAさんは困ってしまいました。
絶対に離婚したくないAさんは、夫が弁護士を立てるならと自分も弁護士に相談することにしました。弁護士が話を聞いてみると、Aさんは離婚話を進めたくないあまり、夫からの連絡はすべてシャットアウトしており、夫が離婚を撤回するまでは話をしたくないという状況でした。
弁護士は「離婚したくないなら、その気持ちを夫に理解してもらえるようなかたちできちんと伝えるべき」とアドバイスしました。それぞれに弁護士がいる場合、本来なら代理人同士で話し合うのが通常ですが、今回はAさんの意向を汲んで双方の弁護士が立ち会いのもと、本人同士で話をしていくことになりました。
手紙で気持ちを伝えたり、感情的にならず落ち着いて話し合うなど、関係を修復する作業がしばらく続きました。通常、弁護士に依頼をすると弁護士を介さずに会うことはむずかしいのですが、今回のケースでは夫婦ふたりきりで話し合う機会を設けることができました。しかし、夫の決意は堅く、そしてまた回数を重ねるなかで、Aさんは今まで聞く機会のなかった夫の本音に耳を傾けることで徐々に離婚することを受け入れていきました。
離婚条件も「離婚したい」と言い出した夫が大部分を譲ることとなり、Aさんの意見が反映された離婚協議書を作成することができました。相談から1年、しっかりと話し合い納得したうえでの離婚が成立しました。
最初に相談に来られたときのAさんは「離婚したくない」の一点張りでした。夫からの離婚の申し出は一方的なもので、Aさんに落ち度はありません。そのため、調停や裁判所で争えば離婚は成立しない可能性もありました。
しかし、いきなり裁判所を介すとなると、二人がきちんと本音で話し合う機会が失われてしまううえ、二人の間に大きな溝が生まれてしまいます。そのメリットやデメリットをきちんと伝えたうえで、弁護士はAさんにさまざまな解決方法を提示しました。
そして、弁護士と話していくうちに将来の道筋が見えてきて、懸念事項がひとつずつクリアになり、納得したうえで離婚を決意できたことがAさんにとって喜ばしいことでした。
「離婚したくない」と思っているだけでは、なかなか相手に気持ちは伝わりません。
弁護士は離婚をするためのお手伝いをしていると思われがちですが、依頼者に離婚したくないという気持ちがあれば、それに沿う活動も全力で行います。今回のケースのように結果は離婚に至ることもありますが、過去には協議中に離婚を取りやめて上手く戻れたケースもあります。
やれることをやれるときにやっておかないと、必ず悔いが残ります。仕方がないと諦めずに、是非弁護士にご自身の気持ちをお聞かせください。