Aさんは、妻と結婚して子供1人を設けましたが、妻は、妊娠出産前後からもともとかかえていた精神疾患の症状が悪化し、それが原因と思われるトラブルが家庭の内外で目立つようになりました。Aさんは、家事育児を可能な限り担当するなどして妻のサポートに努めていましたが、状況が改善する見込みがなく、このままでは幼い子供にまで悪影響が及びかねないと考えるようになりました。そのため、Aさんは、妻との話し合いで自分の実家に子どもと共に一時的に戻ったのをきっかけに、苦渋の決断として離婚を決意しました。
Aさんは、精神的に不安定な妻に幼い子どもの養育を任せることに大きな不安を感じていたため、離婚後は自分が親権者になりたいと考えていました。しかし、いろいろと調べてみると、特に子どもが小さい場合には父親が親権を取得するのは難しいという情報が多かったため、なんとか良い方法はないかと、当事務所に相談に来られました。
当事務所の弁護士は、Aさんからの依頼に基づき、妻及び後日妻が依頼した代理人弁護士との間で交渉を行いました。当初、妻も親権の取得を希望し、子どもを引き渡してほしいとの意向を示していましたが、交渉の結果、Aさんを親権者として協議離婚が成立するに至りました。
Aさんは、弁護士に相談することで、現在の実務では、子どもが幼い場合には母親が親権者となる傾向があるのが実情であるものの、子どもの福祉という観点から、それ以外のさまざまな事情も考慮されるため、必ずしも最初からあきらめる必要がないことが分かりました。
そのため、Aさんは、最終的には調停や審判といった法的な手続きも辞さないという方針のもと、まずは円満かつ迅速な解決を目指して代理人による交渉を試みるという選択をすることができました。
Aさんと妻の双方の弁護士間での交渉では、当初、妻も親権を希望する意向を示していました。これに対して、Aさんは、弁護士を通じて、妻の心身の状態や子どもの福祉のことを考えれば自らが親権者になるべきとの立場は明確に示しつつも、当事務所の弁護士からのアドバイスも踏まえて、離婚までの婚姻費用の支払や妻と子どもの面会交流には可能な限り誠実に対応する旨も併せて伝えました。
妻も、Aさんの誠意を組み、最終的には、Aさんを子どもの親権者として協議離婚をすることに妻の同意を得ることができました。