Aさんは,共働きの妻がいましたが,家計のやりくりについて妻と意見が合わなくなりました。
過去にも,Aさんの妻は浪費が原因で借金をすることがあったため,Aさんは妻に家計のことをきちんとするよう話し合いを持とうとしましたが,逆に妻や義母から家計がうまくいかないのはAさんの責任であると精神的に追い詰められるようになり、離婚を考えるようになりました。
Aさんが離婚を切り出して以降、妻と義母のAさんに対する態度はとても厳しくなりました。
子どもがいる前でも、妻には無視され冷たく当たられ、義母からも嫌味などを言われる毎日で、家庭内に居場所がなくなってしまいました。
離婚の話をしようにも、妻は、全く話し合いに応じません。
Aさんは,これ以上夫婦で話し合うことは難しいと思い,弁護士に夫婦間の調整の交渉を依頼しました。
Aさんの妻も弁護士に委任し、Aさんに対して婚姻費用を請求してきたことから,Aさんと妻の代理人弁護士間で,婚姻費用の負担及び離婚について交渉を開始しました。
Aさんの妻は個人事業主として稼働しており,1週間のうちの大半を事業のために賃貸マンションで居住しているため日常生活でのすれ違いも多く,Aさん自身も妻の収入についてよくわかりませんでした。
Aさんは自分の収入はほとんど家計のやりくりに使っており,妻の収入もよくわからない状態で婚姻費用を払うことはできず、その旨回答しましたが、妻は納得せず、婚姻費用分担請求の調停を申し立てました。
調停では算定基準に従って夫婦それぞれの収入をもとに婚姻費用を算定しますが,妻の収入について十分な資料が提出されず婚姻費用の算定は困難でした。
また、調停期日を経る過程で,妻や同居している義母から相変わらず精神的な嫌がらせを受けてきたNさんも,離婚の話を進めるため、離婚調停の申し立てを行うこととしました。
当初、妻側は同居している義母もおり離婚後の居住について不安があったため離婚については否定的だったものの,離婚後も一定期間自宅に居住できるという条件を提示したところ、将来に対する不安が減ったのか,Aさん側から調停条項案を提示してから2回目の調停期日で調停成立となりました。
Aさんとしては,親権を妻にすることや算定基準通りの養育費を払うことに問題はなかったので,その他の条件として,慰謝料などの金銭的な負担はなく,財産分与についても共有名義の不動産について妻名義の部分を無償で夫名義にする,学資保険は契約者を妻に変更する,離婚成立後も妻子,義母が一定期間自宅に居住することを認めるという条件で合意することができました。
Aさんは離婚を決意してからは,離婚を拒否する妻や義母からの精神的に追い詰められる、将来への不安が大きく、なるべく早く離婚することを希望されていました。
そこで,担当弁護士は、当方から離婚調停の申し立てをしてからできるだけ早期に調停条項を提案して,離婚の意思が強いことを示しつつ,一定期間,妻子らの自宅居住を認めるなど、相手方の承諾を得やすい柔軟な提案を行ったことで、結果として、離婚が、当初想定していたよりも早期に成立することになりました。
別居せずに同居したまま,離婚の交渉や調停をすることは当事者の方にとっては精神的に大きなストレスになります。なかには,交渉や調停が思うように進まない苛立ちからか嫌がらせとも思われるような事象が発生することもあるでしょう。そんな場面でも,代理人に依頼していることで状況を報告できたり,相手方に代理人が苦情の申し入れをするなど防止策を採ることが可能になることもあります。
客観的な条件面での交渉のみならず,代理人に委任することは依頼者の方の精神的な不安を取り除くことがメリットになることも多いのです。