専業主婦のAさんは夫の浮気に気づき、問い詰めました。夫は浮気を認めることはありませんでしたが、問い詰められたことに気分を害したのか家を出ていきました。夫婦の間には保育園に通う4歳の子どもがおり、夫は子どもをとても可愛がっていました。そのせいか、夫は出ていった後も「子どもに会わせろ」「子どもはどうしているのか」と毎日執拗に連絡してくるようになりました。Aさんは返事をしつつも、浮気や離婚の話合いに関しては対応をせず、気がないくせに子どものことだけ執拗に聞いてくる夫に精神的にしんどくなり、夫からの連絡を避けるようになりました。そうすると今度は「保育園の帰りに子どもを奪ってやる」と脅しめいた連絡がくるようになり、Aさんは夫に恐怖を覚えました。
浮気について話し合いたいAさんと執拗に子供のことだけ気にしている夫。Aさんは離婚を考えましたが、当事者同士では話し合いが成立するとは思えませんでした。「子どもを奪う」と脅迫めいたことまで言われたAさんは弁護士に相談することにしました。
Aさんから相談を受けた弁護士は、まずはAさんとお子さんの安全を確保するために一時的に避難してもらうことにしました。そしてすぐに裁判所に仮の監護者指定という保全処分と子の監護者指定、離婚調停、婚姻費用の支払いと合計4つの申立を行いました。
仮の監護者指定の第一回審議の際に、離婚協議がまとまるまでは妻の元で子供を育ててもいいと夫も了承。しばらくの間は安心して母子で過ごせることになりました。その後、離婚調停の中で財産分与や親権について話し合うことになりましたが、協議を進めるなかで夫の態度も落ち着くにいたり、最終的にはAさんが無事お子さんを育てることで合意し、養育費と面会交流を定めたうえで、一年後に離婚が成立しました。
夫は不貞について結局最後まで認めることはありませんでした。そのため、経済的な条件についてはAさんがやや譲歩するかたちとなってしまいましたが、条件にこだわり調停が長引くよりも一日でも早く離婚し、安心して生活を再開したいというAさんの意向を汲む解決方法となりました。
Aさんが相談に来られたときは、夫の言動がエスカレートして母子に危害が及ぶ可能性もある危険な状況でした。弁護士が介入することでAさんとお子さんの安全を確保し、速やかに裁判所の手続きを踏むことができました。弁護士や裁判所など第三者かつ法的機関が間を取り持つことで感情的だった夫も冷静さを取り戻し、最終的には調停で離婚が成立。最初の状況と比較すると穏便かつスムーズに進めることができました。
妻と夫、どちらも子供の親権を獲得したい場合はどうしても当事者同士では上手く話がまとまらないものです。話し合いが拗れて、強引な手段で子どもを連れて行ってしまうというケースも中にはあります。しかし、法的手続きに乗っ取らずに強引なことをしてしまうと、後々裁判所手続きに踏み切られた際に不利な立場になってしまうことがあります。そうなってしまう前に、一度弁護士に相談いただくことをおすすめします。