お互いに公務員で職場結婚をしたKさん夫婦。3人の子供にも恵まれ、同じ職場で共働きをしていましたが、あるとき妻の不倫が発覚しました。なんと不倫相手も同僚で、Kさんのみならず職場内に広く知られてしまい、問題となった妻は近くの別の勤務地に異動になりました。夫もいるなかで職場不倫をする妻に呆れてしまい、Kさんは離婚を決意。妻も離婚には合意したものの、話し合いを進めるうちに子供の親権は譲れないと主張してきました。しかし、Kさんとしては、夫もいる職場で不倫するような母親に親権は渡せません。話し合いは暗礁に乗り上げました。
離婚することは合意したものの、お互いに譲れない親権、ローンが残っている自宅をどうするか、財産分与はどうなるのか、妻から不貞慰謝料は払ってもらえるのか、など決めるべき事柄が多く、当事者同士だけでは埒が明かないとKさんは弁護士に相談しました。夫婦の間は冷え切っているため離婚は決定事項、親権も譲りたくはないけれど、両親の事情に巻き込まれる子供たちには申し訳なく、子供たちの希望はできるだけ叶えてあげたいというのがKさんの思いでした。
依頼を受けた弁護士は、どちらが親権を得るべきかは当事者同士だけの話し合いで決着をつけることが難しいと判断し、裁判所の関与を求めて、調停を申し立てました。調停では、家庭裁判所調査官の関与や調査のもと、子供がどういうかたちでお父さんお母さんと関係を持つか、どれくらい交流するのが望ましいのかを子供の視点から考えることになりました。その結果、別居先が近場だったことやきょうだい仲が良かったこともあり、子供同士は自由に行き来するような交流機会を確保することを前提に、高校生の長女とまだ小学生の二男は妻に、中学生の長男はKさんの元で暮らすことになりました。不貞については疑いようのない事実だったこともあり、妻は慰謝料を払うことを認めました。財産分与に関しても、弁護士が介入し妥当性のある算定で双方合意に至り、比較的スムーズに離婚が成立しました。
もともと夫婦間を除けば仲の良い家族だったため、妻に引き取られた2人は離婚後も頻繁にKさんと長男の家に遊びに来るように。それから数年経ったある日、長女と二男が「やっぱりお父さんのところがいい」と言い出しました。理由を聞くと、どうやら離婚原因となった不倫相手の男性と同居するようになったらしく、その不倫相手と子どもとの折り合いがよくないようでした。後日、改めて親権者変更の申立てを行い、最終的にはKさんが子供たち全員の面倒を見ることになり、養育費も計算し直すことになりました。
母親が育児に向いていないと判断されない限り、親権は母親が得ることが多いのですが、長男だけとはいえ、父親であるKさんが親権を取ることができました。妻側にいくことになったとはいえ、長女、二男も子煩悩なKさんに懐いており、子供たちが自由に行き来できる環境で離婚が成立したことが弁護士に相談して一番良かったポイントだったとKさんは言います。また、離婚後も長女と二男がKさんとの関係を継続できたことで、後日の親権者変更につながりました。
親権を争う離婚では、どちらかが子供を囲い込んでしまうケースも少なくありません。しかし、親の事情に巻き込まれる子供の身になって、子供がどうしたいか、どうすべきかを考えることが肝要です。今回のケースでは、離婚後も自由に行き来できるような形をとり、また、子供の意思を尊重して、最終的に全員がKさんの元で暮らすことになりました。このように、離婚してからもお子さんが成長していくなかで、当然事情や状況が変わっていくこともあります。それに伴って親権や養育費、面会交流など決め直すことも出てくるので、ご相談いただけると適切なアドバイスをすることができます。
離婚すると一口に言っても、残っているローンをどうするのか、財産はどうわけるのか、親権と養育費はどうするか、決めるべき事項が多く、当事者同士では感情も含み言い争いになるケースも多々あります。弁護士が介入することでスムーズに解決することもありますので、是非一度ご相談ください。