10年以上大阪で単身赴任だったYさん。すっかりひとりで暮らすことに慣れ、離れて暮らす妻とも疎遠になっていました。単身赴任中に2人いた子どもたちも成人して社会人となっており、Yさんの中で妻と子の存在がしだいに希薄になっていました。そんなときに出会った女性と意気投合し、Yさんは妻と別れてこの女性と一緒になりたいと思うようになりました。どうにか上手く妻と離婚できないかと考えるも、疎遠ななかで急に離婚の話を持ちかけるのも気まずく、どうしたものかと悩むYさんでした。
自分から上手く離婚協議を持ちかけられないとYさんは弁護士に相談することにしました。長期間の別居状態であれば、婚姻関係が破綻しているとして離婚が認められますが、単身赴任では婚姻関係が破綻しているとは言えないので別居とは認められません。しかし、10年以上の単身赴任の中で後半は生活費を振り込む以外の連絡を取り合っていなかったこともあり、認められる可能性があると弁護士は判断。少し条件を譲歩してでも離婚したいYさんは弁護士に依頼し、調停で話し合うことになりました。
婚姻関係が破綻しているとして離婚が認められる別居状態というのは一般的に3~5年以上とされています。単身赴任の期間すべては別居とは認められませんが、10年以上と期間が長く、連絡を取り合ってない時期も3年以上ということで、離婚原因として認められることになりました。
常々離婚を考えていたYさんは妻に対して申し訳ないという気持ちから、かねてから生活費を多く渡しており、動産についての財産分与や婚姻費用については追加で支払う必要はありませんでした。スムーズに交渉が進むと思われましたが、最後に共有財産である妻の故郷にある土地が残りました。妻の故郷は人口が少なく、売っても大きな金額になる土地ではありませんでしたが、妻の調べたところによると300万円ほどで売却できるとのこと。売却作業はYさんに任せたいとのことだったので、売却して現金を半分に分けることで一旦は合意。しかし、実際に売ろうとすると現地の業者から「買い手がつかない」と断られてしまいました。あらゆる手を尽くしたものの売却はむずかしく、再び妻と交渉することに。この価格で売却できると言ったのは相手方なので、結果的に150万円で売れたと仮定して土地は妻が獲得し、半分の価格をYさんが受け取ることでなんとか解決に至りました。
別居が離婚の理由として認められているのは、「結婚生活を続けていくことがむずかしいと感じて別居しているから」です。ですので、単身赴任は仕事の都合で離れて暮らしているだけなので、離婚原因として認められる別居とはいえません。しかし、今回のケースでは単身赴任の期間が10年以上と長く、後半は金銭的なやりとりを除いて疎遠になっていたとのことで、弁護士はその期間を別居期間として主張。それが認められて離婚原因とすることができました。
地方の買い手のつかない不動産について、もし自分ひとりだったらどうしていいかわからず、どうせ不要なのだからと「引き取ってもらえるなら」と妻に無料で渡していたところだったとYさんはいいます。妻側の提示した金額で売却できないと判明してからも弁護士が各所に問い合わせを行って買い手を探すなど手を尽くしてくれ、売却する方法がないとわかった段階で再度妻側と交渉してくれたおかげで、本来受け取ることができなかったはずの現金も獲得できたと喜んでおられました。
離婚問題を解決するなかで、住まいや土地など、不動産をどう分けるかという問題はよく浮上します。特に地方の買い手のつかない不動産はそのままにしていると相続の際に子どもが引き継ぐことになってしまいますので、先延ばしにせず、離婚時にきちんと話し合ってどうするか決めることが大切です。「みお」なら司法書士も在籍しているので、不動産の名義変更なども一緒に行うことができますので、離婚問題とも合わせてご相談ください。遠方の土地でも大丈夫です。