主婦のAさんには、35年間連れ添った会社員の夫がいました。もともと地方出張が多かった夫でしたが、次第にその回数は増え、出張の期間も長くなりました。不審に思ったAさんは出張先の夫を尾行。残念なことにAさんの悪い予感は的中し、夫が出張先に愛人を作っていることが分かりました。そこでAさんは、夫が浮気している証拠の数々を積み上げた後、夫に浮気を認めさせました。夫を信じ、懸命に家庭を守り、子育ても頑張ってきたAさんでしたが、夫の「裏切り」とも言える行為をどうしても許すことができず、別居・離婚という道を選択しました。
Aさんは別居を機に夫と話し合いをして、Aさんが生活するために必要な婚姻費用(生活費)を、夫が支払うという約束をしました。別居生活が始まった最初のうちは、Aさんの銀行口座に、夫からの婚姻費用の振り込みがありました。しかし、数ヶ月後には振り込みがなくなってしまいました。婚姻費用のほかにも、慰謝料の支払いを約束していましたが、その支払いは1度もありません。そこでAさんは、夫に約束通り婚姻費用と慰謝料を支払ってもらう方法について、弁護士に相談することにしました。
Aさんからの相談を受けた弁護士は、早速、家庭裁判所に対して「調停の申し立て」という手段を取りました。調停の申し立てを行ったことで、支払いが滞っていた婚姻費用を「夫の給料の差し押え」によって無事に回収することができました。
さらに、Aさんは正式な離婚を求めて話し合いを継続するも、結論は裁判に委ねることになりました。途中、夫側から「財産分与の請求」が行われましたが、弁護士はこれまでの家計の状況等を示して夫側の主張を拒否。裁判の結果、Aさんの主張が全面的に認められ、無事に離婚を成立させることができました。
Aさんと夫との話し合いは平行線をたどり、最終的な結論は「裁判」の結果に委ねることになりました。裁判の途中、夫側から「慰謝料の支払い条件」を緩和するよう求めるだけでなく、「財産分与」を求める主張をしてきました。夫からの思わぬ主張に納得のいかないAさんは、その主張は受け入れられないと拒否することにしました。
そこで弁護士は、Aさんの預貯金の取引履歴の整理、夫婦間のお金に関するその他の証拠などを準備し、夫側に反論を行いました。支払われるはずだった婚姻費用や慰謝料の支払いがないことはもちろん、結婚期間中にAさんが生活を守るためにコツコツ貯蓄を続けてきたこと、その反面、夫が浪費を繰り返して いたことなどを挙げて裁判所を説得。最終的にAさんの主張が全面的に認められました。
Aさんは35年もの長きにわたる結婚生活の間、献身的に夫を支え続け、子育ても疎かにすることはありませんでした。さらに、二人の将来のためにと貯蓄にも励んでいました。そんなAさんの想いや努力をよそに、夫が不貞行為に及んだという事実に、Aさんは大きなショックを受けていました。弁護士がしっかりとAさんのお気持ちに寄り添い、じっくりとお話を伺いながら、一緒に解決方法を探っていくように心掛けました。その結果、徐々にAさんは元気を取り戻すことができました。そして、裁判での証人尋問も乗り越え、無事に勝訴判決を勝ち取ることができました。
パートナーに不審な行動があると、浮気を疑い、不信感が募ってしまうものです。そして、たとえ「夫の行動が疑わしい」「これ以上は信用できない」という状況になっても、「浮気の疑い」だけでは離婚できないのが実情です。このケースのAさんのように、確実な証拠を集めて、浮気が事実であることを証明しなければなりません。
また、離婚の際には、話し合いで決めた「離婚の条件」について、きちんと書面(離婚協議書)に記載しておくことが大切です。とくに、「お金」や「子ども」に関する重要な内容については、強制力のある「公正証書」にしておくことで、今回のようなトラブルを防ぐことができます。